HTML5はこれからの
認定試験 レベル1 認定者
東京アプリ・ワークショップ 主催
中島 俊治さん
私は岡山県生まれで、社会人になってから97年までは、広島の郵政省の外郭団体で無線の国家資格試験の試験官として勤務していました。
試験官の仕事は安定していましたが、これからは「インターネット」が中心となって時代を動かすという確信があって、意を決して上京しソフトバンクに就職。設立されたばかりのGeocities JAPANに1号社員として配属されました。GeoCities JAPANは無料のウェブサイトスペースを提供する仮想コミュニティサービスです。
私は、Webページの製作から新しいサービスの立ち上げ、違反コンテンツの削除、ユーザーのホームページ作成のサポートを行いました。
大学時代に友だちからもらったパソコンで、趣味でベーシックプログラムを組んだり、個人的なWebサイト制作やシステム制作を行っていたので、ある程度Web制作は理解していましたが、所詮我流でした。
Geocities JAPANでの経験は、私がHTMLに係るきっかけであったと同時に、本格的な商用Webサイトの制作スキルを鍛えてくれました。
その後、Geocities JAPANは、Yahoo!JAPANの一部となり、組織が大きくなっていくと同時に人数も増えそれぞれの専門職へと細分化して行き、少々窮屈に感じ始めました。
そこで、もっといろいろな場所で幅広い経験を積みたいと思い、2005年、株式会社ベクターに転職、とてもアグレッシブな社長とメンバーに囲まれ、貴重な経験をさせてもらいました。
さらに見聞を広めるため、SBIホールディングスで児童福祉関連の活動に参加した後、野村グループのジョインベスト証券に転職、部長に就任しました。
2006年当時は金融業界では積極的なインターネットの活用が行われ、特にネット証券各社は熾烈を極めていました。そこでの私の仕事は、顧客のためのインターネットを通してのコミュニティ作りがテーマでした。
私は、上京後、業種は違っても、転職や業種が変わっても「人と人とを結ぶWebサービス」を作り続け、インターネットやWebサイトを使って、自分が何を表現していくか、仕事にしていくか、目指していくかということを考え続けてきたと思っています。
2010年ごろからHTML5の初心者向け体験講座「東京アプリ・ワークショップ」を開催し、そこで講義し、HTML5の楽しさを参加の皆さんに伝えています。おかげさまで受講者も800名以上となりました。2014年からは、LPI-JAPANのHTML5アカデミック認定校として資格取得のための講座も開始しました。
私のワークショップの参加者の多くは、初心者やWebデザイナー、コーダーの方ですが、たまに開発会社の代表の方や取締役の方などが個人的に参加なさることもあり、新しい繋がりも増えています。
ワークショップでは、最初に「HTMLとHTML5の違いは何か?」の説明をします。よくショーウインドウを例にして話をします。
現在のHTMLは、とてもきれいです。それを私はデパートのショーウインドーにいるマネキンだと説明します。マネキンだけでもとてもきれいですから、お客様を惹きつけ、商品のイメージを伝え、購入してもらう、とても素晴らしいツールです。
一方、HTML5は、マネキンが動き出すのです。お客様の話に耳を傾け、判断し、対応する、時にはじゃんけんゲームするなど双方向的なしくみが加わったのがHTML5です。もはやマネキンではなく、サイボーグやロボット、アンドロイドだと説明しています。
HTML5でWebサイトはもちろん、双方向型のアクティブなゲームやWebアプリケーション、業務アプリケーションも作れます。HTML5では、データを保存することや、オフラインでも動作するなどの機能が備わっており、サーバに頼らないアプリケーション開発が可能です。コンテンツは俄然面白くなり活用範囲は広がっていきます。
最近では、営業職やバックシステム開発の人たちの参加が増えてきました。営業系やバック系の人たちのHTML5に対する関心が高まっている背景には、この数年でスマートフォンを活用したシステム開発や、フロント系のHTML5の浸透のためフロントとバックを連結する必要に迫られたり、HTML5では何ができるのか、最適化するための情報を共有する必要が出てきたせいなのではないかと思います。
しかし、バック系とHTML5をどう融合させるかについては、戸惑っている人が多い印象を受けます。ブラウザの違いや今までのHTML/XHTMLとHTML5との違いをどのように吸収するかなど模索が続いているように感じますし、現状、全てのブラウザで同じ表示、同じ挙動をさせるという「クロスブラウザ」、それから古いブラウザへの対応ということが制作の前提として立ちはだかっているケースもあります。
HTML5での考えかたのひとつに「Progressive Enhancement(プログレッシブ・エンハンスメント)」という考え方があります。
HTML5に対応していないブラウザには、最低限クリアしなければならない機能は実装し、HTML5に対応しているブラウザには、機能を十二分に活かしたリッチなデザインや機能を提供するというものです。
HTML5は、HTMLの5回目に当たる大幅な改定版です。
Web技術の標準化団体であるW3Cより、2012年12月に策定が完了、2014年にいよいよ標準として勧告される予定です。
スマートフォンのストアで配布されているスマホアプリは、JavaやObjective-Cといったネイティブプログラム言語で作られていますが、HTML5ではハイブリッドアプリとして作ることもできます。
デバイスの違いによる対応の差、スピード感が遅いなどの課題もありますが、コンテンツをHTML5というひとつの言語で構築でき、修正や変更も容易なので、実装工数が少なくコストを抑えられることが、最大のメリットとなっています。
HTMLは「サイト制作」でしたが、HTML5は「サイト制作」と「アプリ開発」という二つの要素を併せ持っています。
これからのWebデザイナーはコーディングやデザインができるだけでは難しい時代になるでしょうし、プログラマもWebデザインのことを理解していることが求められるようになります。
かつてはまったく別の領域だった二つの職種が、HTML5では融合を始めているのです。
HTML5はJavaScriptが大変重要な役割をもっています。JavaScriptはHTMLとCSSをコントロールします。HTML5の双方向性はJavaScriptがあることで実現されます。
HTML5は2014年後半にW3Cから勧告予定ですが、スマートフォンのブラウザは完全にHTML5に標準対応している状態ですし、アプリもたくさんあります。
Hまた、IoT(Internet of things)というしくみでは、今後はインターネットに様々なモノが接続されていくそうです。接続されるモノが増えれば増えるほど、共通して開発できる標準技術が必要になってきますので、その意味でもHTML5の重要性は増すでしょう。
HTML5はまだ標準ではありませんが、すでに世の中ではどんどん取り入れられています。また、手軽にアプリやWebサービスをつくることができる時代は到来しており、ぜひこの楽しい流れに乗り遅れないでください。現在Webのお仕事をされている方は必須で学習を開始された方がいいと思います。
また、HTML5だけでなく、様々なプログラムにもアンテナを立てて情報を収集してください。たとえば、サーバーサイドのプログラムの「PHP」などのスキルも身につけると、個人情報を登録したりデータベースを活用したサービスを実装するなど、できることの幅がさらに広がります。
HTML5には、さまざまなAPI(Application Programming Interface)が揃っています。
描画機能を提供する「canvas(キャンバス)」は、HTML5の豊富なグラフィック機能のひとつで、ゲーム、アニメーション、グラフ作成、画像加工などが可能で自由度はとても高く、従来のFlashに相当します。
マルチメディアの video・audio要素は、JavaScriptで音声・映像を処理することができます。従来必要だったプラグインの手間も必要なくなりました。
さらに端末のGPSを活用して現在位置を取得できます。重力センサーや加速度センサー、タッチセンサーなどの機能と組み合わせることによって、様々なアプリを作ることが可能です。
HTML5はグラフィカルなものがとても得意です。数字や文字を画面に表示するだけではなく、図形や絵を描いて視覚的で動的な表現をさせることができます。 芸術的なコンテンツにも応用できます。これまで以上にWebの世界でよりリッチな表現ができるようになります。
これらリッチコンテンツを実現するHTML5の機能は、Webデザイナーなどにとってみれば非常に使い勝手のいいものですし、スマートフオンのアプリケーションを作る人たちにとっても、十分な要素を備えています。
しかし、HTML5はWebサイトやアプリを作るためのツール・インフラでしかありません。みなさんのアイディアが必要です。アイデアがあれば、とても素晴らしいコンテンツが誕生することでしょう。HTML5を皆さんの自己表現のツールとしてぜひ活用してください。
かつて私が所属していたGeocities JAPANのコンセプトは、自分が作ったコンテンツを世界中に発信できる自己表現の場を提供するというものでした。 今、私がHTML5を皆さんに広めているのも同じ流れなんだと思います。
私がHTML5プロフェッショナル認定試験を受けたのは、教える立場として自分の知識を確認したいという思いがあったからでした。そこで、2013年の夏にHTML5レベル1の実施の告知があってからまもなく本試験の前に行われるベータ試験を申し込み、2013年11月に受験しました。
ベータ試験は、本試験の問題を調整するプロセスとして行われるため、当然、問題数も本試験の倍あって時間もかかるのですが、試験を受けた感想としては、試験範囲が思った以上に広く、基礎的な知識も勉強しておかなければならない試験だといえます。
とくにWebの基礎知識の部分は、試験勉強としては少しおろそかにしてしまった感がありますし、ケアレスミスをするおそれがありますので、皆さんご注意ください。
実は、昨年レペル1を受けるまで私は、認定資格の必要性をあまり感じていませんでしたが、受験してからは考えが全く逆転しました。レベル1のベータ試験については、総じて、Webサイトやアプリ制作において必要だと感じられるいい問題だったと思います。
また、これからHTML5を学ぼうとしている人たちや、就職や転職を考えている人たちにとって、この認定資格は、実力を図る指標になりますし、公平な機関が評価するので履歴書や経歴書にも堂々と記載できます。この認定資格は今後の人生を切り開く大きな武器になります。
試験に臨むための環境としては、パソコンが1台あれば十分です。
HTML5認定教材も発売されていますし、検索すればHTML5に関するさまざまなコンテンツやサンプルが引っかかりますから独学もできないことはありません。
しかし、やはり同じ志の人たちと一緒に学ぶのも楽しいです。私が実施しているワークショップ(入門編)は1日6時間のメニューになっています。朝から晩までのかなりハードな講座ですが、終了の時は、皆さん口をそろえて「あっという間だった」「楽しかった」と感想を寄せてくれます。参加者同士の交流も生まれ、今までと違う未来になった人もいます。
試験というのはとかく、苦しんでいやいや勉強するものになりがちですが、私は、HTML5は楽しむものと信じます。楽しんで勉強に臨み、楽しみながらプログラムを組んでみてください。そうすれば理解も増しますし、おのずと実力もつきます。 まずはHTML5を楽しみましょう。そしてワークショップにおいでください(笑)
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