私がフリーのプログラマーになって今年で5年が経ちました。フリーになる前はコンピューター系の人材派遣会社の社員として9年間働きました。そこでは、お客様先に派遣されてネットワーク管理、サーバー管理に携わっていまました。途中から開発系業務にも従事するようになり、親会社の研究部門で研究開発のお手伝いもしていました。
現在では、フリーランスとして、主にWebサービスや通販サイトの裏側の仕組みをPHPで作ったり、HTML関係のコーディングなどを手がけています。また、LPI-Japan HTML5アカデミック認定校のクリーク・アンド・リバー社(以下C&R社)で講師としても働いています。
昨年、講師の仕事の幅を広げようと思い、LPIC受験を決意しました。元々、ネットワークやサーバー管理の業務に携わっていたということと、Linuxは今最もニーズが高い技術であると思ったので、LPICを選択し、レベル1・レベル2を同時に取得しました。LPIC受験の学習では試験範囲を一通り実機に触れながら勉強しました。普段の業務や今まで勉強していたものとは違う広い範囲からの出題でしたので、実機を触りながらの基礎的な事が、自分にとって非常に勉強になりました。
今回、LPICを勉強してみて気がついたことは、試験対策は実際の業務と関連性が高く、試験対策で勉強していていたことが、今までのやり方や業務をもっと幅広くカバーしてくれるという発見がありました。
もしかしたら、試験後のほうが試験前よりも勉強したかもしれません(笑)。試験勉強をきっちりして受けたつもりでも、「あれ、わからないぞ」という部分が出題されたりしたからです。それで勉強しなおしたんです。意外に覚えたつもりでいたことも覚えてないし、いざ聞かれてみるとわからないものだな、と実感しました。とにかく、自分が解けなかったところをとことん勉強し直しましたね。
もともと私は、コンピューター技術をすべて独学で勉強してきました。専門学校にも通ったことはなく、高卒でコンピューター業界に入ったんです。その後、やっぱり勉強し直したいと思って通信制大学でコンピューターを専門に勉強して卒業しました。
ですから、教わったといえば教わったけれど、学校には通わずにテキストを見てレポートを書いて、といった具合でした。業界でよくある、師匠筋から教わった経験もないので、自分に今まで欠けていたものを埋めるといった意味でもLPIC受験は大事な経験でした。
資格を取ってみて、自分が変わったことと言えば、知らなかったコマンドを実際に仕事で、使えるようになったことですね。講師の仕事に関しても「Webサーバーとは何ぞや」という話を、解らない人に伝えるときに、勉強したことを噛み砕いて説明するということができるようにもなりました。
LPICの次に、HTML5レベル1を2014年の7月に受けました。受験したきっかけはC&R社からの薦めもありましたし、C&R社主催のHTML5レベル1対応の資格対策セミナーにも誘われたこともありました。セミナー終了後直ぐに、筆記試験を受けて一発で合格しました。
しばらくして、HTML5レベル2がリリースされる前ですが、ベータ試験を受験できるという情報を入手しました。HTML5レベル2では、JavaScriptの内容が含まれるとのことだったので、プログラマー講師としては、HTML5を教える上でその範囲は熟知しておく必要があるし、自身のスキルも計りたいと思い、受験しました。
レベル1の受験については、これ一冊勉強すれば試験範囲を網羅した学習ができる(レベル1対応認定教材)、という教材があったのですが、レベル2を受験するに当たっては、当時はまだ教材も出揃っていない状態でした。(注:現在は(レベル2対応認定教材があります。)ですから、まずレベル2の全出題範囲を、アウトラインエディターで項目を分けていきました。重なっているところを全部整理して、まずは各要項を知っているか、知っていないかで分け、次に説明できるかできないかをチェックして、説明できなければそこを集中的に勉強していくという方法で勉強しました。
他にも、サンプルのHTMLを作って1枚で表示できるようにしてみたりもしましたね。たまたま私はプログラマーだったので、JavaScriptを得意としていたからよかったのですが、それでも難しかったです。「仕事ではこれやったことないけど、どうだったかなぁ?」というのもあり結構悩みました。HTML5 レベル2の受験後も、LPIC受験後と同様に、試験で解らなかったことは全部家に帰って復習しました。
HTML5という技術は、プログラマーにとっても、結構難易度が高い技術だと思います。イメージとしては、印刷業界のように一枚もののページを作っている人たちが、開発環境をあげるからゲーム作ってよ、と言われているようなものですね。その知識や考え方、技術を埋めるのには努力が必要です。HTML5により、表現できる範囲は広がったのですが、勉強する範囲もそれだけ広がりました。いままで2Dでやっていたものが、WebGLとなると3Dになりますから、「え、奥行きって何?」なんていうことになりますよね(笑)。
今後の業界的な動向を考えると、HTML5が主流となれば今までよりも、自分の仕事範囲プラス「何か」をできるようにならなければいけないと考えています。業種に限らず、HTMLのデザイナーも、コーディングをやる人も、プログラマーも隣の領域まで手を出さなければやっていけないという状況ですね。その上でリプレイスの案件などもありますから、古い技術にも必要に応じて対応できる柔軟性も必要になってきます。
デザイナーは、HTML5、CSS3という新しい技術で何が表現できるかを知らなければデザインできませんから、新しい技術を知ることが不可欠です。
コーダーやプログラマーは、逆にデザインに対して、「このようなことが可能です」と提案するぐらいでなければ技術の流れに追いつけなくなっていきます。そういった意味ではそれぞれにとって厳しい状態になると思います。本当に「総合力」が求められている時代ですね。
今後は、キーワード検索に引っ掛けたければ、「HTML5の考えに則ってきちんと構造化したページを作れ」という時代にはなるはずです。そのためには、要望通りに構造できるスキルが必要ですし、それにはディレクターの考え方というか、指導が必要になります。大雑把に言えばディレクターが6割、コーディングが3割、デザイナーが1割ぐらいの割合で構造が把握できていないと難しいと思います。
従来の情報を掲載するだけのWEBページをつくっていたような、HTML3や4の時代に比べるとディレクターはそのような総合的な能力を必要とされますので、今までのデザインだけという仕事をしているところは今後辛くなってくるのではないかと感じています。技術力を持っている、持っていないという部分でこれからどんどん差がついていくでしょう。
私自身、LPICとHTML5を両方取得して感じるメリットはその「総合力」にあります。特に小規模な会社では一人一人がある程度、全作業を把握し対応できる能力を必要とされるので、なおさらだと思います。大企業で専門のサーバー管理者がいるところであったとしても、お客様と話していて提案されても分からない、ということでは困ります。
これからの時代のディレクターは、HTML5レベル1、LPICレベル1、OSS-DB Silver程度は取得する力があることが望ましいと思います。特にクライアントと直接話をする人こそ、その必要性があると思います。
たとえば、予算に限度が無い(いくらでもある)というのなら良いのですが、現実は、いかにサーバーをローコストで効率よく構築できるか、という要求が多々あります。実際に技術者に丸投げする予算はあるのか。技術者は予算ならいくらでも欲しいのが実情です。その現実と要求、現場の状況から総合的な判断をするための知識と技術がディレクターには必要です。
クライアントが最新の話題が好きな人だと「HTML5でできないの?」と聞いてくるケースも実際にあります。ディレクターがそれについていけないと、最悪の場合クライアントに足元を見られるという事態も起こりかねません。
そのようなことがないように、各分野の基礎は押えておかねばなりません。実際にHTML5で作る、作らないではなく、クライアントと話をするために知識として必要なことです。そのような時に、HTML5をはじめとするLPIの資格を持っているというのは見えない技術力を相手に提示するための大切なツールともなります。
HTML5への期待は大きいのですが、「使いこなせるようになれるのか」という懸念事項もありますね。HTML4と同じ使い方しかしない人も出てくると思います。HTML5を使う場面としてはSEO対策、マルチデバイス対応などがありますが、それ以上に使う場面の想定にデザイナーがまだ追いついていない、という問題もあると思います。
個人的には、HTML5の進展はゲーム業界から始まると思っています。3D表現でUIをつくるというのはゲームが進んでいます。ゲームのデザインをWebで作りたいというときにHTML5が使われるはずです。ゲームの画面を見て、インスパイアを受けたデザイナーが自分のWebサイトでもそれを作ってみたい、それじゃあ実現するにはどうしたらいいか、ということです。
それには、もっとエンターテイメント性、インタラクティブ性の高いものをデザイナーが思いつかなければそこには到達できません。そして、そうなったときにプログラマーがきちんとサポートできるかというのが大事な点だと思います。
まだちょっと早いとは思いますが、jQueryが出てきた時のように、使いやすい「何か」が出てくれば現状は大きく変わると思います。そのためにも今から基礎的な知識をつけておくことが大事ですよね。
私は技術が切り替わるこの時点でHTML5の系統だった勉強をしてもらえると良いと思います。切り替わるときしか勉強できるタイミングが無いですから。
そういう意味でもHTML5レベル1の試験に期待をしています。これによって「考え方」があるんだ、ということを知ることができます。きちんとアウトライン的に構築していく考え方があるということを知らない人も多いですから、そこをきちんとやるべきだと思います。
プログラマーの視点からすると"プログラムを組込みやすい構造のHTML"にするという理解が必要ですね。今後、HTML5レベル3ができるとすれば、レベル2までで必要なことは要素としてフォローされているので、LPICレベル3のように深堀りして細分化されていると良いと思いますね。
これから受験する方たちに伝えたいのは、まずは試験を受けて合格した後も当然勉強は続くということです。資格を取ってからが本番ですよね。そのつもりで参考書を選ぶと良いと思います。試験対策だけではなく、技術をきちんと学ぶための参考書を選ぶと良いですね。絶対それは役に立ちますし、力になります。
あとは必ず一回は自分で試すことです。自分も今回勉強にツリーエディターを使っていたのですが、「これ知ってる」って思い、勉強を飛ばしたところが試験に出てきて、しかも分からない(焦)という羽目にあいました(笑) 「今ここにPCがあれば試してわかるのに!」って思いました。分かっているつもりのところも一回は勉強をやる、わからないところは繰り返しやるということが大事ですね。選択問題で知識があれば分かる、と思っていると盲点をつかれる問題がでてくるので、きっちり抑えておかないと点を取りこぼします。油断禁物ですね。
HTML5とLPICには相関性もあります。特にサーバーまわりを知らない人はHTML5のサーバーとネットワークについて言葉上の知識だけになってしまいますから、余裕があればLPI-Japanが無償提供している、Linux標準教科書を使って、バーチャルでもいいのでWebサーバーを一度立ち上げてみることが、そのあともずっと役に立つ経験になるのでぜひ挑戦してほしいです。
PHPなどのプログラマーとしてみると、LPI-Japanが運営する3つの資格(HTML5、LPIC、OSS-DB)が揃っていると強いと思いますね。フロントエンドのHTML5ができる、サーバーもできる、データベースもできるとなれば、現場において、即戦力として確実に頼りにされます。
私もいずれはLPICのレベル3に挑戦したいと思っています。ただ、一発で受かる自信はありませんけれど(笑)。今考えているのはセキュリティの技術内容となっている、LPICレベル3 303を受けようと考えています。これは何をやるにしても必要になってきますよね。
もともと自分だけの環境を作るというのが私の夢でした。他人に提供するのではなくて、自分が物を作りやすい環境で物をつくる、自分だけが使える環境が夢でした。
いわゆるパソコンオタクなものですから、自分用にOSからカスタマイズしたコンピュータがほしいという夢があります。まだ自分の今までやってきた範囲のことしかできないので、新しい技術にも手をつけてみたいです。
また、仕事関係ではもれなく、効率的に仕事ができるようになりたいと思います。そして振られた仕事には確実に応えるようにしたいですね。そのためにも勉強は続けていきます。
私にとって資格試験は、知らない知識と技術を埋めるということ、勉強の目安、達成感の充実ということを考えると「ちょうどいい」ものなんですね。資格は範囲がきっちり決まっているので、勉強をしやすいです。独学だとどこまでやったらできたことになるのかが今ひとつ分かりにくい。ですから、新しいことを目指すなら資格の取得がいちばん分かりやすい目標だと思います。
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