合格者の声Successful interview

HTML5プロフェッショナル
認定試験 レベル2 認定者

あらゆるモノがインターネットに
つながる世界 Web of Thsings
を実現するのがHTML5です

株式会社KDDI研究所開発センター
メディア開発グループ

清水 智行さん

Interview01

きっかけ

タグだけで過去の基礎技術が
そのまま使えるデバイスを
越えた共通言語

現在、私がKDDI研究所で担当しているのは、新しいアプリケーションに関する技術の全般的な調査や開発です。研究所に所属したのが2002年ですから、今年で13年目になります。現在、「メディア開発グループ」と兼務でグループリーダーの酒澤さん率いる「スマートホーム・ロボット応用グループ」に所属しています。

もともと私は、画像データの圧縮技術の分野で、動画像の伝送技術やコンテンツのダウンロード、リアルタイムのビデオ会議システムなどの研究開発をおこなっていました。そのうちに、それを使う側のアプリケーション開発にも興味が向き始め、さらにHTML5に興味を持ち始めたのは、HTML5が「Videoタグ」や「Audioタグ」に対応し始めて、マルチメディアをフラットなプラットフォームのさまざまなデバイスで再生できるようになったころです。

最近では、プラグイン無しでウェブブラウザ間のボイスチャット、ビデオチャット、ファイル共有ができる「WebRTC (Web Real-Time Communication) 」など、それこそビデオ会議システムでまさに自分が開発してきた技術までもがHTML5に標準化されるようになっています。私は過去の基礎技術がそのまま使えることに非常に驚くと同時にHTML5への関心がさらに高まりました。

当社は、モバイルキャリアとしてAndroidとiOSの双方を扱っています。さまざまなプラットフォームで動くHTML5は、モバイルアプリケーションとして、さまざまな活用が可能です。とくにさまざまなプラットフォームで動き、GPSとの連動やレスポンシブWebでさまざまなスクリーンサイズに適合させるなど、デバイスの種類やOSを問わず同時にサービスを展開できる共通基盤として、HTML5は研究所としても早くから着目してきた分野でした。

HTML5が正式勧告されたのは2014年10月頃でしたが、それ以前から使われはじめていました。モバイルアプリケーションの世界は、ものすごいスピードで変化しています。むしろ勧告を待つようなスピード感ではなくなっているのが現状です。また、正式に勧告された後も、どんどん新しいHTML5のAPIが出てきています。アプリケーション技術や開発においては、いかに他に先んじて、それらの新しい情報を取り入れていくかがたいへん重要となっています。

教育実証研究でも
活用されるHTML5

福岡市立賀茂小学校では、5年生に100台のタブレット端末(iPad)を配備し、算数や英語のアプリを活用した授業を行い、さまざまな検証を行っています。KDDIと福岡市教育委員会は、2014年9月から教育の情報化推進を目的として、ICTを活用した教育実証研究を行っており、同校はそのモデル校となっています。そこで使う英語教育用のアプリケーション開発を私が担当しました。

このアプリは、iOS対応のApp Storeで提供されている学習アプリ「英語カルタ」を当社で移植して実証実験で使用したもので、英語の音声を聴き、表示されている画像の中から答えを選びながら英単語を学んでいきます。

このアプリは完全にHTML5だけで作られており、iOSだけでなくAndroidでも動作します。また、さまざまな画面サイズや縦横比に対応するため、レスポンシブWebのテクニックやCSS3を使っています。アプリケーションをHTML5ベースで作ることにより、マルチプラットフォームに展開でき、拡張機能を追加しやすいようにするなど、柔軟性のあるものに仕上げました。また、教育現場向けSNS「Edmodo」のアカウントと連動し、先生と生徒を区別してログインすることができます。

「英語カルタ」ATR Creative Inc.

https://itunes.apple.com/jp/app/ying-yukaruta/id641022865?mt=8

こういったモバイルデバイスでの新しいユースケースを増やしていき、将来、そのデバイスの延長上でつながっていく技術を開発していきたいと思ってます。

Interview02

HTML5の活用について

Web of Things
実現の切り札

私がリーダーを務める「スマートホーム・ロボット応用グループ」は3年前に発足しましたが、2014年10月に名称が変わるまでは「メディア・HTML5応用グループ」と呼ばれていました。

名称変更の理由には、グループの研究領域の拡大があります。HTML5の標準化はまだまだ進行していますが、HTML5の技術情報の収集とその応用活用、アプリケーション開発とともに、グループとして新分野の研究も目指していこうというのが、我々の新たな目標となっています。

例えば、モノのインターネット (Internet of Things : IoT) の分野、また最近ではテレビやカーナビ、家電とWebが連携していく「Web of Things : WoT」などの分野です。我々のグループでは、その中でもメイカーズムーブメントと呼ばれる「ものづくり系」の方々に関係する技術開発を進めています。

現在、組み込み系(エンベデット)の分野で、注目されているのがHTML5とFirefox OSです。HTML5は、OSや機種を超えて多用なデバイスで動作するだけでなく、プラットフォームにとらわれず、さまざまな機器をコントロールすることができます。

またFirefox OSは、機器のノードにおいて動作しながら、スマートフォンやタブレットのブラウザ、テレビのセット トップ ボックス (Set Top Box : STB)、親指ぐらいの小さなシングルボードコンピュータなどにも活用できます。さまざまな産業用機器にコンピューティングの基盤が搭載され、それぞれが連携して動くWoTの世界への流れはすでにはじまっています。

その意味でもWoTの分野での研究には、幅広い分野のタレント(才能)を持った人たちが必要です。さまざまな専門分野を持つ総勢十数名の研究員がそれぞれの所属チームと兼任してこのグループに所属しています。清水さんもその一人です。

そしてWoTの開発を進めていく中で、HTML5の幅広い活用とともに大きなイシューとなるのはセキュリティです。これはたぶん多くの人が感じていることであり、日本全体としてこの分野の強化を図っていっていただきたいと思っています。我々のグループには、まさにその意味でセキュリティの専門家も所属しています。

また、他の強みを持った外部の研究者との交流も重要です。たとえばMozillaと我々はかなり密接にオープンなコミュニティ活動を進めており、資格を取得したメンバーがそのスキルを実践する場所もともに協力して作っています。コミュニティで協働してWoTに最適な基盤を作り、さらにそれぞれの事業者が創意工夫して新しいサービスを創りだされているわけです。

Interview03

HTML5の課題

拡大と制限の両立

「Smart Home Robot」の考え方は、家の中のさまざまな機器をそれぞれ通信させたり連携させることです。機器をスクリーンのあるデバイスで、タッチパネルやマウスやキーボードを使ってリモート操作するだけであれば、今の技術でも可能です、しかし、機器同士がOSの種類を超えて通信できる便利で簡単、かつセキュアな通信方式を実現するためには、HTML5の最新技術をできるだけ早く取り入れる必要があります。そのためには、HTML5や次に登場する新しい標準規格を真っ先に活用していきたいですね。

また、ブラウザについても標準化が始まっているものがあります。直近では、WebRTCでさまざまなデバイスがP2P(Peer to Peer)でつなぐ技術は実用化されていますし、標準化までには至りませんが、コミュニティレベルでの議論が始まっているものとして、NFC(Near Field Communication=近距離通信技術)やBluetooth(短距離無線通信技術)もあります。これを活用すれば、サーバを介すことなく、ブラウザ同士が直接通信できるようになります。

家電機器やAV機器がそれぞれ独自に通信機能を持つことで、リモートだけでなく生活に密着した情報の受発信が可能になれば、ライフスタイルが大きく変化するでしょう。そういった新しい分野での活用をこれからは期待しています。実際、W3Cの枠組みでも「Web of Things」というキーワードは注目されています。

一方、HTML5にも課題はあります。それは、デバイス操作の「拡大と制限の両立」です。操作領域が拡大し何でも操作できるようになると、それを悪用されるケースも出てくるため、セキュリティの強化も同時に必要になってきます。したがって、矛盾するそれらを両立し、安全でありながら広くさまざまな方々に使っていただけるようなデバイスを目指すのが、今後の重要な課題です。そして、その実現が競合各社との差別化にもなるわけです。

Interview04

試験に向けた取り組み

APIは実際に触ったことの
あるものほどよく覚える

当社は通信会社ですので、情報通信系の資格はできるだけ取得するよう推奨しています。そんな中で2014年1月、LPI-Japanから「HTML5プロフェッショナル認定試験」がリリースされたこと知り、取得を決めました。

グラフィックや画面のデバイス間での適応や通信などの機能については、すでに実務で経験していましたから、テキストを読まなくても答えられる自信が当初はあります。しかし、HTML5自体がかなり幅広い規格にわたっており、開発したアプリケーションで扱っていないAPI、たとえばIndexedDBやWeb Performanceなどについては、勉強する必要がありました。

レベル1を2014年4月、レベル2は12月に取得しましたが、とくにレベル2は試験範囲が非常に広く、それを網羅的に勉強するのはかなりたいへんでした。ただそれらは、今後、使っていきそうな汎用性の高いAPIもありましたから、この機会に勉強したいと思う気持ちのほうが強く、それがモチベーションにつながりました。

私の場合、HTML5の標準化そのものを研究員として直接追いかけていましたので、勉強はテキストを読みながらW3Cの勧告やドラフトを直接確認し、実際にコードの動作を実証するなどの方法で行いました。

HTML5は、ブラウザさえあれば、あいた時間に自主学習が可能です。他のプログラムに比べて、コンソールを開いて一行コードを打ち込んだだけでも試せる手軽さはHTML5ならではといっていいでしょう。

また、APIは実際に触ったことのあるものほどよく覚えます。とくにAPIに関連する出題が多いレベル2の試験対策としては、実際に自分の手で動作を確認することが、直感的に思い出しやすくなると感じました。

日常の開発スキルと試験問題に答えられるのとでは、かならずしも100%同じではありません。開発の現場では、うろ覚えであってもドキュメントを見て確かめながら作ることが出来ますが、それを試験に出されてみると、しっかり勉強して理解していなければ答えることはできなかったりします。

また開発者としてHTML5を使う場合、自分に都合のいい方法でコーディングしてしまったりすることがあります。その意味でHTML5プロフェッショナル認定試験の準備は、自分のスキルを客観的に見直し、曖昧な知識を再確認してクリアに理解するいい機会になったと思います。

とはいっても、実際に受験したときは、ピアソンVUEのあのシステムを前にかなり緊張しました。とくにレベル2になると複数回答の問題も多くなります。また、複数といいながら、答えが一つの場合もあります。試験が終わってみて、まあ及第点には届くのではないかとは思いつつも、なにかひっかけ問題でハマったのではないかと不安でした。そのぐらい、ほんとうによく出来た問題だったと思います。

Interview05

アドバイス

「モノづくり」の世界を
広げるHTML5

レベル2の試験問題は、JavaScriptとDOM、IndexedDB、パフォーマンス、そして多少のグラフィックスに関する出題でした。グラフィックスについては、CanvasやSVG程度で、現状の試験問題では、マルチメディア関係はプレイヤーを作れるぐらいまでのAPIしか出ていませんでした。

ユースケース自体がマルチメディアだけではニッチなこともあり、問題として出すのは難しいのかもしれませんが、今後、WebRTCの標準化も進む中で、グラフィックス分野のスキルは、持っていれば注目されやすいと経験上感じています。

WebRTCの他にも、Webブラウザで3次元コンピュータグラフィックスを表示させるための標準仕様であるWebGLなど、グラフィックスAPI関連の内容に関心を持つ人はけっこう多いのではないでしょうか。

HTML5は、もともと登場したころからプログラムを書くまでは至らなくても、たとえばWebデザイナーなどが同様の機能を使えることが魅力です。また、デバイスそのものを作る人たちにとっても、HTML5の知識は、さらに汎用性のあるデバイス作りに役立ちます。

たとえば、スマートフォンやタブレットでなく、それらからコントロールする先の連携デバイスなどを作る際にHTML5の知識があれば、さまざまなデバイスからコントロールしやすいデバイスが作れます。つまり、HTML5は「モノづくり」の世界をこれまで以上に広げてくれるといえるでしょう。

その意味で、HTML5は、それを実際に使えることが学ぶ上での喜びでもあります。ですから、これからHTML5プロフェッショナル認定試験の取得にチャレンジしようと考えている人は、資格を取ることだけを目標とするよりも、HTML5をマスターするとさまざまなことが可能になることに期待して、ぜひ受験していただきたいと思います。

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